電力広域的運営推進機関が2025年1月に公表した需要想定は、今後の電力需給の構造変化を示唆している。人口減少や省エネの進展によってこれまで減少傾向にあった電力需要が、データセンターや半導体工場の新増設、経済成長といった要因で、この先2034年度にかけて増加していくと見込んでいるのだ。
将来の需要増には再生可能エネルギー(再エネ)など脱炭素電源の拡充が不可欠だが、その電源確保が滞れば、先端産業の国内立地が阻害され、産業競争力や経済成長の機会を失いかねない。そこで求められるのが供給側だけでない需要側の対策だ。
その取り組みの1つとして重視されているのが「デマンドレスポンス(DR)」の推進である。需給のバランスに応じ、電力を使用する側が、消費パターンを意図的に賢く変化させる運用方法だ。
DRの推進は、日本のエネルギー政策の根幹とされる「S+3E」の原則にも資する。その最重要視される原則とは、安全性(Safety)の「S」を大前提に、3つの「S」(安定供給:Energy Security、経済効率性:Economic Efficiency、環境適合:Environment)を図っていくもの。
1つ目のEである「安定供給」では、発電所など供給側の電力量が不足しそうなとき需要家が消費を抑える「下げDR」を実施すれば、需給を均衡に向かわせる力になる。バランスの回復で大規模停電を未然に防ぎ、需要側の制御そのものが予備の発電能力として機能していく。
2つ目の「経済効率性」では、市場価格が高い時間帯の消費を避けることで電力の供給エリア全体の需要急増を抑えることになる。主に火力発電所が担っているピーク対応時の急激な焚き増し(追加の発電)の軽減にも役立つ。
3つ目の「環境適合」には、適切なタイミングで電気を積極的に使う「上げDR」が貢献する。天候に左右されてしまう太陽光発電などの再エネが電気をつくり過ぎてしまうとき、それを消費する活動によって無駄をなくせる。現在は供給過多が予想されると、発電事業者には発電抑制が求められているが、そのリスクが減れば再エネの拡大にも寄与していける。
日本テクノのSMART CLOCKは、電力の使用状況を「見える化」するだけでなく電力の市場価格にも連動している。安価な時間帯は青、高価なら赤のLEDが発光する。その表示で判断し、再エネ供給が多く価格が安いときは生産性を高め、高いタイミングは工程の見直しを心がけるなど、上げ下げのDRに取り組むことができる。
エネルギー政策の根幹を電力の使用者側から支え、予測されている将来の需要増にも対処していけるような活動を多くの企業に手掛けてもらいたい。それを日々の業務の中で自然に実行していくには、意識改革が必要だ。一目で行動の時機を判断できるSMART CLOCKは、意識をそこに向かわせるための最適なツールだと考えている。
※本記事は、環境市場新聞第85号(2026年7月1日発行)に掲載された記事です。