ヒートポンプを調整し、電力ピークの上昇を抑える[Case511]

やどり温泉いやしの湯は和歌山県・橋本市の市営宿泊・入湯施設で、SCRUMきのくに株式会社が運営を請け負っている。2015年に台風の被害を受け、前任の運営会社が指定管理を辞退。当時よりこの施設の運営に携わっていた支配人の西裕生氏はこの温泉の泉質にほれ込んでおり、自ら新会社を立ち上げ運営事業者として名乗りを上げた。「以前からデマンド監視装置は入れていましたが特に対策は取っておらず、契約電力は200kW以上でした。電気の"見える化"サービスを知り、これを活用すれば契約電力を引き下げられると思い、導入しました」。

同施設でもっとも電力を使うのは源泉をくみ上げ、加熱するヒートポンプ。西氏はこのポンプの稼働を調整することで電力ピークをコントロールしている。事務所のSMARTMETER ERIA（以下ERIA）または厨房のSMART CLOCKが警報を発すると、西氏はERIAの画面で瞬時デマンドと予測デマンド、さらにデマンド確定までの残り時間を確認する。そしてひっ迫度合に応じてどのポンプをどの程度の時間止めるかを決め、屋外のポンプ調整ユニットへ行き、一定時間ポンプを止める。「消去法で少しの時間なら給湯温度に影響の出ないポンプ調整に行き着きました。当館がもっとも混むのは年末年始です。そのときの客数によってある程度使用電力量を予測し、ポンプの稼働台数と時間を調整します」。

これまではチェックアウト後にリネン類を回収し、すぐに洗濯・乾燥をしていたが、あるスタッフが「場合によってはチェックイン後のポンプ稼働と重なり、デマンド上昇の原因になっているかもしれない」ことに気付いた。そこで洗濯・乾燥を21時以降に実施するよう手順を改めたところ、警報を発する回数が減った。スタッフが自分の業務との関連に気付いたことが、電力ピークの改善に貢献した。