
電気工作物を区分してそれぞれを規定
3章「電気工作物」を構成するのは、1節「定義」、2節「事業用電気工作物」、3節「一般用電気工作物」の3つの節。ここで見ていく1節の条文は38条の1つだけで、そこに並べられた4項で各用語を定義している。
なお、1章の2条に記された「電気工作物」の定義は、発電、蓄電、変電、送電、配電、および電気使用のために設置する工作物(機械、器具、ダム、水路、貯水池、電線路など)だった。ここではいわばその内訳が示される。
電気工作物は大きく「一般用電気工作物」と「事業用電気工作物」に分けられる。1項では、そのうちの「一般用」を定義する。概略すれば比較的電圧が小さく安全性が高い設備のことで、一般家庭や商店などの屋内配線、家庭用の太陽光発電などが相当する。条文では、発電所内や危険物のある場所以外の同一構内に設置するものなどと定めている。また、低圧で用いる一定の発電用機器を「小規模発電設備」と定義しているのもこの項だ。
2項は「事業用」の定義。短い条文なので略さず引用すると〈この法律において「事業用電気工作物」とは、一般用電気工作物以外の電気工作物をいう。〉である。文字通りの意味で、「一般用」以外、発電所、変電所、送配電設備、工場やビルの高圧設備などすべてが含まれる。
3項は2022年6月に成立した「高圧ガス保安法等の一部を改正する法律」で、関連する電気事業法にも加えられたもの。1項で示された「小規模発電設備」のうち一定出力(太陽電池=10キロワット以上50キロワット未満、風力=20キロワット未満)の設備が「小規模事業用電気工作物」と定義されている。この新設した区分に対して基礎情報の届出など保安管理のルールを2節の条文で定めている。再生可能エネルギー発電設備の導入増に伴う事故などに対応した改正だ。
4項は「自家用電気工作物」の定義。事業用電気工作物のうち、電気事業(一般送配電、送電、配電、特定送配電、発電の一部)に用いられるもの以外を指す。自家用発電設備や、高圧受電の工場・ビル、特別高圧の大規模工場・施設といった場所で使われる電気設備が相当する。
重要インフラである電気設備には、安全な運用が継続できるよう、保安などに関する規制を設ける必要がある。だが、すべてに画一的なルールを課すのは適切ではないため、使用状況や規模などによって区分けし、それぞれの保安規制を定めている。一定の技術基準への適合義務など具体的な規制は次回解説する2節および3節に記される。

※本記事は、環境市場新聞第79号(2025年1月6日発行)に掲載された記事です。