再エネ拡大と人材対策に点検制度の見直しを

Techno's Thinking

 日本テクノでは現在、経済産業大臣に向けた嘆願書の提出を目的として署名活動を行っている。キュービクルなどの電気設備に必要とされている現行制度の点検の間隔を延ばすよう求めるものだ。
 義務づけられているのは、資格を持つ技術者による月次点検と年次点検の2つ。名称の通り、毎月実施する目視が中心のものと、年に1回の停電を伴う検査がある。

 現在でも、保護装置などの設置で安全性が認められたものは月次が隔月に、高圧設備の製造年が新しいなど、より安全が担保される場合は年次を3年に1回に、それぞれ延伸できる緩和措置がとられてはいる。しかし、脱炭素化を進める社会的情勢、技術者の減少、デジタル点検技術の進歩といった背景を考えればその措置は十分とはいえない。
        
 1つ目の背景に挙げた脱炭素化で欠かせないのは太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー(再エネ)施設の導入拡大だろう。これまで大規模発電所が賄っていた需要を、多くの施設が分散して担うようになっている。そのぶん点検対象は増大する。
 対して点検技術を持った有資格者の数は減少傾向にある。高齢化が進んでいる現役の技術者は退職数が増えていき、逆に入職数は電気保安業務の認知度不足や、有資格者でも実務には一定の経験年数が必要になるといった制限から減少が続き、絶対数の不足が懸念されている。
 なお経験年数については2021年3月以降の制度改正で、認定された機関が行う講習を受ければ期間が短縮されるようになった。当社も講習実施者として要件を満たし、今年7月には神奈川県相模原市の研修施設でこれを行う。
 今後は実地訓練用の設備を整備し各主要都市で順次実施する計画だ。また認知度向上も考え、テレビやラジオのCM、ウェブでの告知など技術者採用活動にも力を入れている。
        
 増える点検対象と減少する人材という事情はあるが、電気設備の安全維持は守り抜くべき事柄だ。点検はそのためにある。そしてそれは従来の人の手に、新たな技術を加えれば格段の効率化が図れる。
 当社では1996年からES SYSTEMを販売し、遠隔でデータ収集できる複数センサーの設置により、電気設備の常時(24時間365日)状態監視を行ってきた。現在では7万件弱のお客様に、いわばこのデジタル点検によって安全と安心を提供している。そこには点検品質のばらつきがなく、迅速な異常検知という利点もある。蓄積したデータを、経験豊かな技術者が分析すれば、故障の予知も可能になる。
 経産相に嘆願する内容は、遠隔常時状態監視システムが設置されている電気設備(自家用電気工作物)は月次点検を4ヵ月に1回、一定の波及事故防止策のある施設は停電を含む年次点検を6年に1回にすること。デジタル技術による安全性確保を前提に再エネ拡大と人材対策がかなう提案と考える。ユーザーにも停電頻度が減るなど負担軽減につながる。署名用の入力フォームを当社サイトに設置し広く賛同を呼びかけている。

※本記事は、環境市場新聞第76号(2024年4月2日発行)に掲載された記事です。

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