【概観・電気事業法】第10回/3章2節・3節

電気・電力

ポイント解説シリーズ

電気事業法(電事法)の概要を紹介する連載の第10回。前回概観した「3章1節」に続く3章の残り2節を見ていく。1節では、電気工作物を用途や規模などで区分し、それぞれの名称で定義していた。2節と3節では、前節で区分したものを細かく規制する内容が示されている。 記事作成においては、政府のサイト「e-Gov法令検索」を利用して、電気事業法(2025年6月6日施行)の条文を参照した。

電気工作物を安全に運用するための規定

 3章の2節と3節は、39条から57条の2まで合計57の条文からなる。2節「事業用電気工作物」に含まれるのは6つの款。節タイトルの通り、各款とも該当する電気工作物について規定している。

 2節1款は39〜41条の3つの条文で示す「技術基準への適合」。事業用電気工作物について、省令で定める技術基準に適合させるよう義務づける。省令を、人や物に損傷を与えないなどの規定に沿う内容にすることも求めている。
 2款は42〜46条の6つの条文による「自主的な保安」。原則、事業用電気工作物の設置者に対し、保安規程の策定、保安の監督をする主任技術者の選任、それぞれの届出を定め、主任技術者免状の種類や試験体制にも触れる。小規模事業用電気工作物(一定規模の太陽光発電など)の届出義務を示すのもこの款だ。
 3款は1997年改正で新設された。そのためすべて46条に枝番号(2~23)がついた条文からなる。道路や空港など環境に大きな影響を与える開発事業は、環境影響評価法の対象になり、事業者が事前調査し、国や自治体などの意見を反映させて事業計画を策定する必要がある。その対象には発電所も含まれており、この款では同法に関連する発電所分野のルールを定める。発電所特有の評価方法の実施義務といった内容だ。
 4款は47〜55条の11条文からなる「工事計画及び検査」。発電所や変電所など一定以上の事業用電気工作物の工事計画について、主務大臣の認可や事前届出が必要といった規定を示す。原子力発電に関わるものは使用前検査に合格しなければならないことも定めている。53条には、工場やビルのキュービクルも含む自家用電気工作物の規定もあり、使用開始後、遅滞なく届出する義務を課している。
 5款「承継」は55条の2のみ。相続などで事業用電気工作物の承継を認め、届出の義務を定める。
 6款は2022年の改正で加わった「認定高度保安実施設置者」。55条に3~13の枝番号がつく11の条文で構成される。先端技術の活用や高度なリスク管理体制などがあると認定されれば、届出や審査といった行政手続きが簡略化される制度を定める。
 ここまでの6つの款で50超の条文がある2節に比べ、3節「一般用電気工作物」が含むのは3つの条文のみ。対象が比較的安全な家庭の屋内配線などのため事業用に比べ緩やかな規制になっている。電力会社などが安全確認の調査をし、不備があれば所有者または占有者へ通知を義務づける内容。経産相に対し改善命令を出す権限も与えている。

第10回 3章2節/3節

※本記事は、環境市場新聞第80号(2025年4月1日発行)に掲載された記事です。

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