今さら聞けない「再生可能エネルギー発電促進賦課金」

今月のことば

電気・電力

賦課金が初の1万円超え!

2021年3月、経済産業省が再生可能エネルギー(以下、再エネ)の固定価格買取(FIT)制度における2021年度の買取価格および発電促進賦課金単価を公表しました。
これによると買取価格は、これによると太陽光や風力は前年よりも1円の低下、水力発電や地熱発電は前年と変わらない価格。また250kW以上の陸上風力と、10,000kW以上のバイオマスは入札により決定、となっています。

買取価格を踏まえて算定された2021年5月から適用される賦課金単価は1kWh当たり3.36円。前年と比べて1割強の増加となっており、1カ月の電力使用量が260kWhの標準的な家庭の負担額でみると月額873円(年間10,476円)と、初めて年間で1万円を超す金額となりました。
日本での発電量に占める再エネの比率は、欧州など再エネ普及率の高い国々と比べると半分程度ですが、それでも着々と増えており、2020年には21.7%となりました。さらに7月には「エネルギー基本計画」の素案が公表され、2030年の電源構成における再エネの発電比率は36~38%を目指すことが示されました。

再エネ比率が高まるなかで、今あらためてわたしたちの生活に直接的な影響を与える発電促進賦課金の概要をFIT制度も含めて振り返ります。また2022年からあらたに始まるFIP制度の仕組みも紹介します。

再エネの発電比率を伸ばしたFIT制度

FIT制度は2012年に始まり、再エネで発電した電気を国が決めた価格で電力会社が一定期間(10年~20年)買い取ることを約束するというものです。対象となる再エネは「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」の5つで、国が決めた要件を満たす事業計画を立て、その計画に基づいて新たに発電を始める施設が対象です。FITは国内の再エネ普及を推進する目的で始まった制度であり、発電事業者は安定した収入を得ることで、コストのかかる発電設備の建設などを計画的に進めることができます。
ちなみに制度が始まる前の2010年には、国内の発電量に占める再エネの発電比率は10%でした。これが2020年には21.7%。さまざまな要因があるとは思いますが、FIT制度の大きな貢献度がうかがえる伸び率です。

国民すべてが負担する「賦課金」

FIT制度では電力会社が買い取る費用の一部を電気を利用するすべての国民が賦課金というかたちで負担しています。負担額は一般家庭も法人も関係なく電気の使用量に応じて決まり、電気代の一部に組み込まれています。当然、電気使用量の多い法人ではその負担額も大きくなってしまいます。
賦課金の単価は毎年国が決めていますが、買取価格などを踏まえて年間でどのくらいの再エネが導入されるのかを推測し、全国一律になるよう調整しています。また推測値と実績の差分については翌々年度の賦課金で調整します。

賦課金の推移を見ると、制度開始当初の2012年は1kWh当たり0.22円。これが2013年に0.35円、2014年には0.75円、そして発電量の増加とともに2019年には2.95円、2020年には2.98円、2021年には前述したとおり3.36円と大きく値上がりしました。

賦課金は、いつまで上がり続けるのでしょうか。
賦課金はFIT制度にともなう負担金ですので、制度が続く限り発生します。FITの期間は最長で20年。つまり今後20年は賦課金も続くとされています。環境省の推計によると、2030年までFITが続くと前提したうえで、2030年をめどにピークアウトし、2048年ころには0円になるとの試算が出されています。
とはいえ、2030年までにはまだ少し時間があります。国では事業者の競争力維持・強化の観点から電力使用量が大きく、一定の基準を満たす事業者に対して賦課金の減免措置制度を設けていますので、こちらもチェックしてみてください。

また運用改善による省エネ活動で電気の使用量を抑える、太陽光発電設備を設置して自家消費に充てることで、電気代自体を減らす。これらも値上がりする賦課金対策の一つといえます。

見えてきたFIT制度の課題

制度開始から10年以上が経ち、賦課金の問題だけでなく、ほかにも課題が見えてきました。
そのなかのひとつは卒FITの問題です。卒FITとは、一定の買取期間が過ぎてしまった設備で発電される電力のこと。これまでFIT制度により一般的な市場価格よりも高い買取価格で取引していたものが自由契約となり、売電による収入が減ってしまう可能性が高くなります。FIT制度の2021年の買取価格は前述した通りですが、卒FIT後の大手電力会社の買取価格は条件などによって異なりますが7~9円程度が相場です。FITによる買取価格からは大きく下がってしまうのが現状です。
卒FIT後の対策としては、買取事業者をより条件のよいところに変更することや、蓄電設備を備えて自家消費に充てることなどが考えられますが、自身の発電量や状況に合わせた検討が必要です。

またもうひとつ注目したいのが、FITに認定されながら未だ稼働していない発電所の存在です。FIT制度では運用開始の2012年から2017年の法改正まので間は、認定から運転開始までの期間に制限が設けられていませんでした。そのため、認定を受けただけで未稼働の設備が多く残っており、資源エネルギー庁の発表によると、2018年3月末時点では認定量の約半数が未稼働となっています。仮に、未稼働の設備が今後稼働を開始すると、買取価格は認定当時の価格(今よりも高い買取価格)が設定されることになり、当然賦課金にも影響してきます。

「FIP制度」がスタート

FIT制度により導入が進んだ再エネですが、「2050年カーボンニュートラル」の達成に向け、さらなる活用が求められています。将来的に再エネを主力電源化していくためには、火力や原子力などほかの電源と同じように、再エネも需要と供給のバランスをみて、電力市場の状況を踏まえた発電を行っていく必要があります。しかし、再エネ比率を上げていくためには、前述したように賦課金の問題、またそのほかにも発電量が自然環境に左右されることや、送電網の強化が必要であること、それに関わるコストなど、さまざまな課題があります。

そうした課題を法制度の観点から促進していこうというのが「FIP制度」です。
再エネを電力市場へ統合するにあたっての段階的な措置として、FIT制度に加え、電力市場の価格と連動した発電をうながすFIP制度が定められ2022年4月から運用されます。
FIP制度「フィードインプレミアム(Feed-in Premium)」とは、再エネ発電事業者が卸市場などで売電する際に、その価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せするものです。こうすることでさらなる再エネの導入を促進します。
FIP制度では、電気が供給される場合に必要な費用の見込み額をベースにした「基準価格(FIP価格)」が設定されます。あわせて市場取引などによって発電事業者が期待できる収入分も「参照価格」として定めます。この「基準価格」と「参照価格」の差「プレミアム」が再エネ発電事業者の収入となるのです。
プレミアムは一定額ですが、参照価格は市場価格に連動して1カ月単位で更新されるので、収入も市場価格に連動します。つまり、市場価格が高くなる電力ピークの時間帯に電気を売ったほうが多くの収入を得られるということ。さらに蓄電池を活用してつくった電気を貯めておいて必要なとき(価格が高いとき)に販売するなどの、経営判断も収益を大きく左右します。

FIP制度は、再エネが他電源と共通の環境下で競争し、電力市場で自立できるようになるためのステップとして、電力市場への統合を促しながら、投資インセンティブが確保できるよう支援する仕組みです。これまでのFIT制度は、需要側のニーズや競争によって価格が決まる電力市場からは切り離された制度であり、再エネ発電事業者はいつ発電しても同じ金額で買い取ってもらえるため、電気の需要と供給のバランスを意識する必要はありませんでした。FIP制度の導入により、仕組みとともに再エネ発電事業者の意識にも変化が求められる状況になるのです。

なお2022年4月の制度開始時には、1,000kW以上の太陽光発電など一定規模以上の新規認定がFIP制度の対象となりますが、FIT制度対象となる50kW以上の発電設備でも事業者が希望する場合は、FIP制度による新規認定を選択することができます。また、すでにFIT認定を受けている電源についても、50kW以上であれば事業者が希望する場合は、FIP制度に移行できます。このように、今後はFITとFIPの2つの制度が併存することで、再エネのさらなる活用を後押ししていきます。

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