サステナビリティという言葉がよく聞かれるようになった。日本語で「持続可能性」。現代の企業に求められる重要課題の1つとされる。サステナビリティ経営といえば「環境・社会・経済」という3側面のすべてで長期にわたる存続や発展を目指すものだ。
企業は、地球の「環境」と平穏に暮らせる「社会」があって初めて成り立ち、「経済」の循環で利益を得る。それは自明といえる世界の構造だろう。その仕組みを見るだけで、経営の大切さは理解できる。だが、この考え方に至るまでは変遷があった。
まず1960年代。深刻な公害が社会問題になり環境配慮が強く求められるようになる。企業は対策を進め、状況は徐々に改善されていく。
それが1990年代に向かって株主還元の要請が高まり利益追求が最重要視される風潮に傾く。この流れの中で多く露見するのが、企業の不祥事だ。2000年代に入って贈収賄、製品の偽装、粉飾決算などの不正が大きく取り沙汰される。それらを是正し、健全な経営を目指すガバナンスが注目されたことで生まれたのがCSR(企業の社会的責任)活動である。2010年には、組織の社会的責任に関する国際標準規格ISO26000が発行され、ここで説明責任、透明性、倫理的行動など具体的指針が示された。多くの企業がこの規格を参考にしてCSR報告書を作成するようになった。
2016年、パリ協定が発効する。世界各国が参加を約束した、平均気温上昇を産業革命前からできる限り1.5℃以下にする取り組み。これを境に企業の環境配慮などの姿勢を評価するえSG投資が加速した。企業は投資家の求めに応じるように、社会的責任を果たす具体的活動のCSRにえ、長期的な戦略を考えるサステナビリティ経営に取り組むようになる。
CSR活動は、企業が社会に対して果たすべき責任を自覚し取り組むもの。ボランティア、寄付、教育支援などの「社会貢献」。フェアトレード、労働者権利の保護、透明性確保、説明責任などの「倫理的行動」。環境に配慮した製品開発、自然保護などの「環境活動」といった、いわば事業で得た利益を「環境・社会」に還元する行いに近い。
一方のサステナビリティ経営は、冒頭でも触れたように「環境・社会・経済」の3側面、つまり自社も含む世界のすべてを、将来にわたって存続できるようにする取り組みだ。具体的な活動としては、「環境」分野での省エネ、再生可能エネルギー活用、適正な廃棄物処理など。「社会」での労働条件改善、多様性尊重、地域社会貢献など。「経済」での長期的利益確保、リスク
管理、持続可能なビジネスモデルの構築など。
目標の置き所は異なるが、重なる部分もあり、両者を企業活動に取り込むことで持続可能な成長がもたらされると考えていいだろう。
改めてそれら活動項目を見返せば当社の事業内容と照応するものが多い。襟を正し、お客様とともにサステナビリティ経営を実践していこう。
※本記事は、環境市場新聞第78号(2024年10月1日発行)に掲載された記事です。