【DR事例】現場作業を優先し、可能な範囲で業務を調整[Case519]

　開始時期：2023年7月　取材時期：2024年3月

1984年よりイカの塩辛や松前漬などの海鮮珍味を製造・販売する竹田食品。海産物の原材料管理から製造・商品管理まで一貫した生産を行う。同社は2023年7月に日本テクノの電気の「見える化」サービスを導入し、JEPX（日本卸売電力取引所）の市場価格（約定価格）と連動して料金単価が変化する「市場連動型メニュー」で電力供給を受けている。北海道では近年風力や太陽光などの再生可能エネルギーの導入が進み、その発電量によって市場価格も変動する。

JEPXの価格をチェックし、調整を指示するのは執行役員総務部長の折茂竜司氏だ。同社の製造工程はほとんどが電化されており、多くの電力を使用する。折茂氏は市場の価格を毎日チェックしたうえで、価格の高い時間帯の使用電力量を下げ、価格の低い時間帯の使用電力量を上げる「上げ下げデマンドレスポンス（DR）」に取り組む。「当社は日曜・祝日が休日で土曜が不定休です。北海道は、真冬の冷え込みの厳しい朝や夕方に価格が上がる一方、春・秋の土日は価格が下がる傾向にあるとわかりました。そこで当社では特に土曜の市場価格に注目し、業務に取り組んでいます」。

2024年3月30日の土曜は出勤日。折茂氏は8:30から15:30の間、市場が0.01円になっていることを確認し、前倒しできる作業はなるべくこの時間に行うよう現場に呼び掛けた。「生産計画との兼ね合いもあり、無理はしないでよいと伝えています。ただ、同じ作業を行うのでも原価が変わってくるので、コスト意識を養うためにもなるべくこまめに価格動向を伝えます」。一方で夕方など価格が上昇した際はなるべく残業をせずに業務を終えている。「上げ下げDR」の意識は現場で徐々に共有されつつある。